悲劇のボタンフライジーンズ

 (トイレトイレトイレ!! やっとトイレだ・・・・!!)  俺は我慢に我慢を重ねながら映画を見ていた。  えっ? 我慢しないでトイレに行けばいいだけなんじゃないかって?  やれやれこれだから・・・・。  映画というものは一種の芸術作品だ!  芸術作品を鑑賞している人たちの前を通るなどということは俺にはできないね。  映画を鑑賞する前にトイレを済ませておくのがマナーというものではないかと俺は思う。  それに隣には世界一かわいらしいこの俺のカノジョがいるんだ。  映画に行く前にトイレに行き忘れるようなお子ちゃまだと思われるなんて失態はなんとしてでも避けたい。  んっ? なんだかんだ言ってるけど結局トイレに行き忘れて我慢していたんじゃないかって?  う、うるさい!!  しょうがないだろデート中で緊張していたんだから!!  (あっ、あった!! トイレだ!!)  とりあえずトイレを発見。  事前に映画館を下見していたため場所はばっちりだ!  女子トイレは少し混んでいるようだが男子トイレはガラガラ!  (あとちょっと・・・・もう少しだけ我慢できればトイレができるぞ!!)  焦る気持ちを押さえ早歩きで着実にトイレまでの距離を縮める。  そしてトイレの前に・・・到着!  あとはトイレをするだけだ!  触り心地のいい高価なデニムの上から数秒ほど軽く股間を触り気持ちを紛らわせるとボタンに手をかけ・・・。  (あ、あれ・・?)  ボタンが取れない!?  今日のために買ってきた新しいデニム・・・・ボタンフライのデニムのボタンが取れない!?  なぜだ!?  確かに買ったばかりのボタンフライジーンズは少しコツがいる。  ファスナーと比べると少し開けるのに手間取ることが多い。  でも、家で何回かトイレの練習はしたはず・・・。  どうして・・・・。  (お、落ち着け・・・・落ち着いてやれば・・・・。)  俺はすぐに気づいた。  家ではゆっくりと外していたが今は急いで外そうとしている。  落ち着いて時間をかけ確実に外そうとすれば取れるはずだと。  しかし・・・・・。  「あっ・・・・ああっ!!」  情けない声を漏らしてしまい思わず顔が熱くなる。  遂にトイレの我慢が限界を迎えつつあるのだ。  映画を見ている途中の長い我慢。映画館のトイレに行くまでの我慢。我慢・・・我慢さえすれば・・・・トイレまで我慢すればもう我慢しなくていいんだと 自分に何度も言い聞かせての我慢・・・・そして今がトイレ・・・・もう我慢の限界だもん!! オシッコがでちゃうぅ!!  「んっ・・・あんっ!!」  気づいたら俺は股間を揉みながら足を上下に動かしていた。  な、なんという失態を・・・・中学生にもなって・・・・ああ、しかしなんとも恥ずかしいことに・・・こうしていないと漏れてしまいそう・・・!!  「漏れちゃダメ・・・・・出ちゃダメ・・・・。」  とりあえず我慢が先決だ! 買ったばかりのデニムを濡らすわけにはいかない・・・・。  濡れた股間をカノジョに見られたら俺は終わりだ・・・。  いや、パンツを濡らした時点で中学生として終わりだ!!  とりあえず・・・・尿意が収まるのを待つ!  それから今度こそ冷静にゆっくりとボタンを外そう。  幸いにもここは男子トイレ。  女の人に見られることもないしガラガラで人も・・・・。  「ねぇ何してるの!?」    「・・・・!!!」  突然の声に振り向く。  隣に男の子が立っていた。  見た感じ保育園児くらいの・・・。    「ひとりでオシッコできないの? こうやればいいんだよ!」  そういうとサロペットのファスナーを降ろしトイレを始めた。  ああ、俺もファスナーのズボンだったらああやって今頃すっきりできてたのに・・・・。  「ね? 簡単でしょ! こうやればいいんだよ! 早くしないとオモラシしちゃうよ!」  男の子の声にさらに顔が熱くなるのを感じる。  恥ずかしさに耐えきれず股間を揉む手を止める。  そして再びデニムのボタンを外しにかかるがまだ尿意は収まっていないためやはり焦ってしまいうまくいかない。  足がお尻がもぞもぞと動き震える手での着脱作業を邪魔する。  (あっ・・・・。)  股間に生暖かい感触を感じる。  わずかにちびってしまったようだ・・・このままでは男の子が言うようにオモラシ・・・・。  ダメだ!!  それだけは絶対にダメだ!!  (助けて・・・・・誰か助けて・・・・オシッコ漏れちゃう!!)  股間を握りしめてバタバタと足を動かすが尿意は収まらない。  オシッコが漏れそうだ・・・・どうしよう・・・漏れちゃう・・・・オモラシしちゃう!!  誰かズボンを脱がせてよ・・・・オシッコ漏れちゃうよぉ・・・助けてよぉ!!  「ねぇ、大丈夫!? ズボンごと脱いじゃいなよ!!」  男の子に言われるままにデニムに手をかけ思いっきり引っ張る。  お尻のところでつっかえて数秒ほどロスしたものの運よく脱げた。  と同時にパンツまで脱げてお尻が丸出しになったが気にしている余裕もなくオチンチンを持ち狙いを定める。  (やっとオシッコできる!!)  俺の頭の中はそれだけだった。  (き、気持ちいい・・・・。)  我慢に我慢を重ねたオシッコをようやく放出。  膀胱が空になる・・・・。  気持ちよくてたまらなかった。  だが、そんな気持ちは隣から聞こえてくる笑い声で現実に戻された。  「な、なんだよ!」  泣きそうな顔で怒る。  お尻丸出しでトイレをしている格好のままで情けないことこのうえなかっただろう。  「だって、ボクが保育園に入ったばかりのころみたいだったんだもん!」  男の子の声に反論の余地もなかった。  お尻を丸出しの格好でオシッコをするなんてのは保育園に入ったばかりの小さな子供のやることだ。  (・・・・っていうか。)  よく見ると男の子以外にも映画館の男性客が何人かこっちをチラチラみている。  もう恥ずかしさのあまり感覚がおかしくなりそうだ・・・。  (と、とにかく・・・・。)  まずはオシッコが止まってくれないことにはどうしようもならない。  必死に止めようとするが一度出し始めたものを止めるのは難しい。  止まってはまた出始めてを4,5回ほど繰り返し結局止まったのはすべて出し尽くしてからだった。こんなことなら・・・。  (それより急いでパンツを履かなきゃ!!)  オチンチンから手を離しパンツの両端をつかみ乱暴に引っ張り上げお尻を隠す。  振るのを忘れていた・・・という心配の必要はなかった既にパンツはちびったオシッコでぐっしょりとクロッチの部分が濡れていた。  「あー、パンツが黄色くなってるー!! いけないんだー!!」  白ブリーフを履いていたのでちびった部分が黄色くなって目立っている。  学校がある日は必ずトランクスだが今日は着替える機会もないだろうと小学生の時履いていたブリーフだった。  まさかこんな形で人に見られるなんて思わなかったから・・・・。  (隠さなきゃ!!)  黄色くなった部分は死角になり後ろから隠れるが白ブリーフに包まれたお尻はまだ男性客から見られ放題だ。  急いでデニムを引っ張り上げ履こうとするが再びお尻の部分がつっかえてうまくいかない。  ボタンを外して・・・いや、それも時間がかかる。  四苦八苦しつつ数十秒後になんとかデニムを履き直しお尻を隠す。  かなり長い時間みれててしまったことだろうがとにかく元の状態に戻った。  周囲の視線と濡れたパンツを気にしつつも洗面台に移動し手を洗う。  (・・・・。)  (・・・・。)  (・・・・。)  時計を見る。  いろいろと考え込んでいて時間が経ってしまったようだ。  周囲にはさっきまでの失態を目撃していた男の子や男性客たちはいなくなっていた。  (考えてみれば・・・・。)  あの男の子や男性客たちは赤の他人で今後会うことはないだろう。  知り合いには俺の失態は知られていない。  下着こそ悲惨な状態だがデニムにはシミ1つついていない。  (ふぅ・・・・。やれやれだぜ・・・・。)  あれはなかったことにしよう。  俺は普通にトイレを済ませてカノジョの元に帰る。  濡れた下着は気になるが・・・・。  それさえ気にしなければいい。  俺はもとのかっこいい俺に戻るんだ!  (さて・・・・。いつまでもレディを待たせるわけにはいかないな。)  俺は男子トイレを出てカノジョの元に戻った。  「おまたせ! 悪かったなトイレが混んでて・・・・別にそこまでしたくなかったけど念のため行っておこうと思ってな!」  かっこよくカノジョに話しかける。  そして、その後ろにいたのはさっきの・・・・・・。  「あ、さっきのお兄さんだ!! 次からは自分でできるズボンにして早めにトイレに行かないとね!! パンツはおうちに帰って取りかえてもらえば大丈夫だよ!!」     

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